BLOGブログ

2022年10月20日

【症例】小学生の手掌多汗症に鍼灸が効果的だった一例

症例など


相談月 9月
小学校五年生の女の子、緊張したり心配した時に手掌と足底にびっしょり汗をかくのが悩みの種。特に学校で紙に字を書くときに紙が濡れてびしょびしょになるのが一番困っている。発汗は、好きなことに集中しても同じように起こる。汗が出る前兆として発汗部に熱が走るとの本人談。お母さんによると、この症状は幼児の頃からあり、手掌がふやけて皮膚がはがれることが頻繁にあったとのこと。





随伴症状
・頻尿気味、一日おきに夜間尿がある
・寝つきが悪く途中で眼が覚める
・怖い夢をよく見て内容を覚えている(泣きながら目が覚めることも度々)
・こめかみの頭痛
・ため息が良く出る
・しゃっくりが良くでる
・口内炎になりやすい
・皮膚の乾燥
・喉が渇いて氷の入った飲み物をごくごく飲む
・便秘と下痢を繰り返す





所見
脈:浮数 舌:舌質紅 舌尖紅 痩舌 舌苔薄白 
京門 労宮 然谷に圧痛 





弁証(タイプ)
心火上炎 心腎不交 





治法
清熱瀉火 交通心腎





選穴(ツボ)
復溜 陰げき 神門 印堂 照海
だん中 百会 曲池 少府 労宮
心兪 脾兪 腎兪





経過
一診目で手掌と足底の多汗がだいぶおさまった。手汗が出難くなり一安心している。手をつないでこんなにさらさらだったことはないとのお母さん談。今は花粉症で鼻水が止まらないのが一番の悩み。

初診から二か月経過した11月に手汗が再発。
早速来院してもらい生活状況を確認すると、習い事のスケジュールが過密になってお風呂にだらだら入ること等も少なくなった。寝つきが悪く夜間尿意による中途覚醒も復活したとのこと
施術により改善。

前回からさらに半年経過した4月に手掌と足底の異常発汗が再発。
家族の中で自分だけ猫の毛が足底に着くのが気になって再々来院。
初診時に比べて、睡眠良好で頻尿もおさまり夜トイレに起きることもなくなった。やせぎすで太りにくかったがふっくらしてきた。





東洋医学的考察
小学五年生ながらベースに腎陰虚を持ち、交感神経優位(気滞)により心火上炎を来した。そのため腎陰の不足により心火を鎮静できず心腎不交を呈するに至った。(不眠や口渇は陰虚によくみられる症状、頻尿と夜間尿は腎虚および自律神経の乱れ、怖い夢を覚えているというのは実証を示唆。)この一例においては、一回目の施術で心火を消退させることと腎陰を補うことが同時に行われたと思われる。針を怖がったためほぼお灸での施術となり瀉法の灸を多用した。最後に舌尖の鮮やかな赤色が消退していることを確認し施術完了とした。何度か再発し再来院するも治療をを繰り返す度に心身とも健やかになってきていると感じられた。





現代医学からみた多汗症
簡単に言えば、体温調節に必要な量を超えてエクリン汗腺からの発汗量が亢進している状態。原発性と続発性がある。原発性多汗症は局所性であり手掌多汗症、足底多汗症、腋窩多汗症、頭部顔面多汗症の4つに分類される。続発性のものはガンや感染症などの疾患に続発する場合と抗うつ剤などの薬剤性のものがある。
この症例の場合は原発性局所(手掌・足底)多汗症の可能性が高い。

原発性局所多汗症の診断目安としては下記があり、2項目以上当てはまると多汗症と診断されるようだ。

①25歳以下で発症
②左右とも発症
③睡眠中は無発症
④一週間に一回以上、異常発汗がある
⑤家族歴がある
⑥日常生活に支障がある
この症例では、①②③④⑥が当てはまる。

原発性局所多汗症は精神性発汗が多く、精神的興奮のない夜間には発汗がとまる。不安や抑圧や精神的な緊張に伴って起こることが多く、抗不安薬や抗うつ薬を処方されることもある。

一般的な治療は対処療法のみとなり、自律神経調整薬や抗コリン薬などの投与、塩化アルミニウムの塗布などで、重症の場合には交感神経遮断術を行うこともある。この場合は副作用も考慮しなくてはならない。

原発性局所多汗症は、その病態がわかっていても現代医学では対処しきれない疾患の一つといわれている。





【JR阿佐ヶ谷駅から徒歩2分】はり灸処まんねん堂


ご予約はこちらから

CONTACT

お問い合わせ

ご予約・お問い合わせはこちら

お問い合わせフォーム

お電話でのお問い合わせはこちら

080-6256-6565

プライバシーポリシー



友だち追加