2020年03月06日
お灸の原料ヨモギについての覚え書き
灸の効果について
春はヨモギが芽吹く季節ですね。
お灸の原料にもなるヨモギ(蓬)は、和ハーブの女王ともいわれるほど薬効の高い植物です。
ヨモギはキク科の多年草で野山や土手、道端どこにでも生え踏みつけられてもどんどん繁殖してくるため、生命力の象徴とされてもいます。さらにヨモギは、雑草・野草の中ではダントツに栄養値が高いため、日本古来より生命力を高める薬草として食用と外用に用いられてきました。
ヨモギは日本人にとっては特別な雑草なのです。
漢方でも艾葉(がいよう)と言う生薬名で処方されています。
西洋では、ヨモギはワームウッドとマグワ―トとして知られています。
ワームウッドはアブサン酒の原料として有名なニガヨモキで、同属のマグワートとともにヨモギ属に属します。
余談となりますが、新宿のバー「ベンフィディック」では国産有機ヨモギから店主自らが手作りしたアブサン酒をオーダーできるようです。
ヨモギの強い芳香は邪気を払う魔除けの力があるとされ、日本でも古来より「厄除けの霊草」として神聖視されてきました。アイヌや沖縄、インディアンの間でも特別な植物として扱われ、古代中国や中世ヨーロッパにおいては厄除けや魔術にも使われていたようです。
ヨモギの若草のような強い芳香はリフレッシュ作用があり、精油成分としては、1,8-シオネール、α-ツヨン、ピネンが含まれています。
特に1,8-シオネールは、自律神経交感神経を抑え副交感神経を優位にするため、リラクゼーションに効果を発揮します。
この1,8-シネオール、西洋ハーブのローズマリーとも共通する成分で、ローズマリーや、マグワートやワームウッドなどのヨモギ属は中世ヨーロッパでは魔除けの儀式に使われてきました。
中世ヨーロッパでのペスト蔓延時にはローズマリーやセージ等とともにスローイングハーブとして部屋に敷きつめて疫病対策に使われたのもその精油成分の高い除菌作用によるものと思われます。
魔除けの儀式とはおどろおどろしいイメージですが、薬草の芳香と強い抗酸化力により、防菌剤として実務的に使われていたのです。
スローイングハーブとはハーブの使用方法で、足でハーブを踏みしだくことにより、有効成分が空気中に解き放たれて人体に及ぼす効果をねらったもの。これは、疫病対策に限定せずとも、好みのハーブを用いて、寝室や居間でスローイングハーブすることによりリラクゼーション効果がありそうです。
中世ヨーロッパのスローイングハーブの中心的な実践者は「魔女」であったともいわれています。薬草に詳しい専門職の女性はその治癒能力の高さから時の権力者からは魔女として忌み嫌われ何かとスケープゴートにされたとか。彼女たちはその薬効を熟知したうえでローズマリーやヨモギ類を特効薬的に病人に処方していたようです。
ヨモギの葉にはクロロフィルが豊富に含まれ、末梢神経拡張、新陳代謝促進、貧血、冷え性など、男女比では女性に多い症状に対して有効であるとされています。
ヨモギの学名がアルテミシアであることも示唆的です。アルテミシアとは、ギリシャ神話に登場する女神アルテミスに由来するギリシャ語である事からも、古くから女性と関連のある薬草として特別視されていたとか。
最近は花粉症などのアレルギー体質の改善、認知症予防にも効果があるとして研究されているようです。
灸に使われる艾(もぐさ)の成分はよもぎの葉の裏側の絨毛を集めて乾燥させたもので、絨毛には蝋燭の蝋の成分が含まれているとのこと。蝋が含まれるため、ロウソクと同じで燃焼速度が遅いため、お灸に適しています。
よもぎの効能は代表的なところで下記が挙げられます。
浄血作用、増血作用による貧血予防、止血作用、健胃、腸内環境改善、デトックス、冷え、リラクゼーション、美肌効果、強い抗酸化作用 アレルギー改善 等々
以下簡単に説明します。
浄血作用
ヨモギには現代人に不足しがちな食物繊維やビタミン、ミネラル、クロロフィルがバランスよく含まれている。
豊富な食物繊維やクロロフィルが、血液に混入した老廃物や毒素、酸化した油などの有害物質をフィルターして便として排泄することにより血液が浄化されるとのこと。
デトックス作用
食物繊維やクロロフィルは小腸の絨毛繊維の奥に蓄積された重金属やダイオキシン、農薬等を取り除く作用があり、その結果、腸内環境が改善されるのでデトックスにつながるとのこと。
ウイルス感染予防
さらにヨモギには、インターフェロン・インディーサー(インターフェロンを増やす物質)が含まれ、インターフェロンはがんや肝炎を抑えるともいわれている。ウイルス性疾患の予防にも。
増血作用
豊富に含まれる鉄分が、クロロフィルとの相乗効果により増血を促し、貧血を改善し予防にもなる。ビタミンCは鉄分の吸収を助けるので同時に摂取すると良い。
止血作用
ヨモギの葉にはタンニンとビタミンKも豊富に含まれるため、止血作用を持つ。乾燥させたヨモギの葉を出血している傷口にあてると止血効果がある。脂溶性のビタミンKには血液が凝固する条件の一つである凝固因子を活性化する作用を持つ。
灸の効果
ヨモギを原料とした灸を据えることで増血作用、止血作用、強心作用が高まります。これは鍼にはないお灸の三大効果として知られています。
●増血作用 - 赤血球を増やし血流が良くなる。
●止血作用 - 血小板の働きを良くしてかさぶたを生成し止血を促進する。
●強心作用 - 血管壁をしなやかにして、心臓・血管収縮力を増強する。
灸による軽い火傷は、加熱蛋白体(ヒストトキシン)が生成され血中に吸収され、白血球が増加して免疫機能が亢進することが知られています。このように、ヨモギを原料とした灸は、血液量と血液像に良い効果をもたらします。その他、灸の生理的な作用としては、自律神経系や内分泌系に影響を与える等が代表的でしょうか。灸の煙にはタバコの煙とは全く異なり異なり強い殺菌作用があります。
灸の美容効果
灸熱によりヒートショックプロテイン(HST)が生成されやすくなるようです。
HSTの効果で保湿力が格段に高まるため美肌につながります。HSTは血流に乗って全身すみずみまでいきわたるため、手足に灸を据えただけでも美顔効果が期待できるのも利点です。
まとめ
春になると一気に芽が吹き、よもぎ餅など食用としても用いられるヨモギ。
昔の人は、冬の間に機能の衰えた身体を、ヨモギを春のエネルギーとして取り入れることで心身を調整していたのでしょう。食べても煎じて飲んでもお風呂に浮かべても、もぐさをこしらえて灸を据えても万能のヨモギ。この素晴らしい雑草ヨモギを生活に取り入れない手はありませんね!
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